
公共工事を受注しようとする建設業者にとって、経営事項審査(経審)は重要な手続きです。
経営事項審査では、建設業者の「経営規模」「技術力」「社会性」などが総合的に評価されますが、その中でも会社の財務内容や経営状況を評価するのが経営状況分析です。
経営状況分析を受けると「経営状況の評点(Y評点)」が算出され、このY評点は経営事項審査における総合評定値(P点)の算出に用いられます。
このページでは、経営状況分析の目的や対象となる決算書類、審査される8つの指標について分かりやすく解説します。
経営状況分析とは、建設業者の財務内容を分析し、その会社の経営状況を点数化する制度です。
経営事項審査では、完成工事高や技術力などだけではなく、会社の財務的な健全性や収益性なども評価されます。
このうち、財務内容を中心とした「経営状況(Y)」を評価するために行われるのが経営状況分析です。
経営状況分析では、決算書類などをもとに複数の財務指標を算出し、その数値を総合して「経営状況の評点(Y評点)」を算出します。
経営状況分析は、国土交通大臣から登録を受けた経営状況分析機関に申請します。
経営事項審査そのものを都道府県や地方整備局へ申請するのとは異なり、経営状況分析については登録経営状況分析機関が分析を行います。
そのため、経審を受ける場合には、
という流れで準備を進めることになります。
経営状況分析では、主として会社の決算内容をもとに財務指標を算出します。
そのため、建設業許可の決算変更届に使用した決算書類と、経営状況分析に提出する財務諸表の内容を正確に整理することが重要です。
法人の場合には、貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書などの財務諸表が分析の基礎となります。
単に決算書の数字を入力するだけではなく、建設業の財務諸表として適切な科目に整理することが重要です。
経営状況分析は、国土交通大臣の登録を受けた「登録経営状況分析機関」に申請します。
建設業者は、以下の登録経営状況分析機関の中から申請先を選択して、経営状況分析を受けることができます。
各分析機関によって、申請方法、必要書類の提出方法、手数料、結果通知までの期間などが異なる場合があります。
そのため、経営状況分析を申請する際には、各機関の最新の案内を確認することをおすすめします。
登録経営状況分析機関は変更される場合があります。
最新の登録機関については、国土交通省の「登録経営状況分析機関一覧」をご確認ください。
登録経営状況分析機関一覧(令和7年1月現在)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000091.html
現在の経営状況分析では、会社の経営状況を次の4つのグループに分け、合計8つの指標によって評価します。
| 分類 | 指標 |
|---|---|
| 負債抵抗力 | 純支払利息比率・負債回転期間 |
| 収益性・効率性 | 総資本売上総利益率・売上高経常利益率 |
| 財務健全性 | 自己資本対固定資産比率・自己資本比率 |
| 絶対的力量 | 営業キャッシュ・フロー・利益剰余金 |
それぞれの指標には異なる役割があり、単純に「利益が多ければ高得点になる」という仕組みではありません。
純支払利息比率は、売上高に対してどの程度の利息を負担しているかを見る指標です。
「支払利息-受取利息配当金」を売上高と比較して算出します。
一般的には、借入金などに伴う利息負担が小さいほど評価されやすい指標です。
負債回転期間は、会社の負債総額が月商の何か月分に相当するのかを見る指標です。
流動負債と固定負債の合計を「売上高÷12」で割って算出します。
負債が大きいほど返済負担などが大きくなるため、一般的には負債回転期間が短い方が評価されやすくなります。
総資本売上総利益率は、会社が保有する総資本をどの程度効率的に利用して売上総利益を生み出しているかを見る指標です。
売上総利益を2期平均の総資本で割って算出します。
単純な売上高だけではなく、会社が保有する資本をどの程度効率的に活用しているかが評価されます。
売上高経常利益率は、売上高に対してどの程度の経常利益を確保しているかを見る指標です。
経常利益を売上高で割って算出します。
本業だけではなく、営業外収益や営業外費用も含めた会社全体の通常の経営活動による収益性を評価する指標です。
自己資本対固定資産比率は、固定資産をどの程度自己資本でまかなっているかを見る指標です。
自己資本を固定資産で割って算出します。
自己資本によって固定資産をどの程度まかなえているかを確認することで、会社の財務的な健全性を評価します。
自己資本比率は、総資本に占める自己資本の割合を見る指標です。
自己資本を総資本で割って算出します。
自己資本比率が高い会社は、借入金などの他人資本への依存度が比較的小さく、財務的な安定性が高いと考えられます。
営業キャッシュ・フローは、会社の営業活動によってどの程度のキャッシュ・フローを生み出しているかを見る指標です。
利益だけを見るのではなく、実際の資金創出力を評価することがポイントです。
経審では、営業キャッシュ・フローについて2期平均の数値を用いて評価します。
利益剰余金は、会社がこれまでの事業活動によって蓄積してきた利益の額を見る指標です。
利益剰余金がプラスで大きい会社は、過去の利益を内部に蓄積していることを示します。
一方、利益剰余金がマイナスとなっている場合には、過去の赤字などによる影響を受けることになります。
経営状況分析では、8つの指標をそれぞれ個別に点数化するだけではありません。
それぞれの指標を一定の算式によって総合し、最終的に経営状況の評点(Y評点)が算出されます。
つまり、
決算書の数字 → 8つの財務指標 → 経営状況点数(A) → Y評点
という流れで評価されます。
そのため、単純に「売上が増えた」「利益が増えた」という一つの要素だけでY評点が決まるわけではありません。
経営状況分析によって算出されたY評点は、経営事項審査の総合評定値(P点)の算出に使用されます。
経審では、
を総合的に評価します。
このうち「経営状況」にあたる部分がY評点です。総合評定値(P点)は、これらの評点をそれぞれ一定の割合で加重して算出されるため、Y評点だけが極端に高くても、経営規模や技術力の評点が低ければP点全体は伸びません。反対に、Y評点に課題があっても、経営規模や技術力でカバーできる部分もあります。したがって、公共工事の受注を目指す建設業者にとって、経営状況分析はP点全体を構成する重要な一工程として位置づけられます。
経営状況分析では、会社の決算内容がそのまま評価の基礎になります。
そのため、経営状況分析を適切に行うためには、決算書の数字を建設業の財務諸表に正しく整理することが重要です。
例えば、
など、決算書の内容を正確に確認する必要があります。
特に、経営状況分析だけでなく建設業許可の決算変更届や経営事項審査まで行う場合には、それぞれの書類の数字に整合性を持たせることが重要です。
Y評点は8つの財務指標をもとに算出されるため、決算の内容によって評点が変動します。
例えば、決算期末に借入金を圧縮する、固定資産の売却タイミングを調整する、役員報酬の設定を見直すなど、決算対策によってY評点の改善が期待できる場合があります。
ただし、こうした対策は決算期が締まる前に検討する必要があるため、経営状況分析や経審の受審を予定している場合は、決算期末を迎える前の段階から専門家に相談しておくことをおすすめします。
経営状況分析で使用する財務諸表は、建設業許可の決算変更届に提出する財務諸表との整合性を確認する必要があります。
異なる数字になっている場合には、その理由を説明できるようにしておくことが重要です。
経営状況分析では、指標によって2期平均の数値を使用するものがあります。
そのため、直近1期の決算書だけではなく、前期の決算内容についても確認する必要があります。
Y評点は経審における重要な指標ですが、会社の経営状態を一つの数字だけで判断するものではありません。
8つの指標を個別に確認することで、
など、自社の財務上の特徴を把握することができます。
経営状況分析の結果通知書は、どのくらいで届きますか?
分析機関によって異なりますが、書類に不備がなければ数営業日程度で結果通知書が発行されることが多いです。
申請先の分析機関の最新の案内をご確認ください。
複数の分析機関に同時に申請することはできますか?
経営状況分析は、いずれか1つの登録経営状況分析機関に申請します。
分析機関を変更することも可能ですが、通常は毎年同じ機関に申請するケースが多く見られます。
Y評点が低い場合、経審自体を受けられませんか?
Y評点が低くても、経営状況分析の結果が経審を受けられない理由にはなりません。
Y評点は総合評定値(P点)を構成する一要素であり、そのまま反映されて総合評定値が算出されます。
決算書の内容を修正すればY評点は上がりますか?
決算内容を事実に反しない形で適切に整理することで、結果としてY評点が改善するケースはあります。
ただし、事実と異なる内容で決算書を作成することは認められません。
決算対策は、決算期が締まる前の適法な範囲での検討が重要です。
単体決算と連結決算のどちらで申請しますか?
経営状況分析は、原則として単体の決算書類(建設業許可の決算変更届と同じ範囲の会社の決算内容)に基づいて申請します。
新設会社で決算が1期分しかありません。経営状況分析は受けられますか?
2期平均を用いる指標については、1期分のデータのみで算出することになります。
1期のみでも経営状況分析自体は申請可能ですが、指標の算出方法についてはあらかじめ確認しておくと安心です。
経営状況分析は、経営事項審査を受けるための重要な手続きです。
しかし、実際には、
といったご相談もあります。
当事務所では、経営状況分析に必要となる財務諸表の確認から、経営状況分析申請、さらに経営事項審査まで、建設業者の状況に応じてサポートしています。
経営状況分析や経営事項審査についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。